オレ、オレ タカシ
タカシの声「知っているよ。洋服箪笥の下から三段目だよ。だけどもうないよ。婆ちゃん俺たちが結婚したときに新婚旅行費用と生活の足しにと二百万くれたでしょ。」
千恵子「そうだったけ、ああ、そうだった。思い出した。ということは、あんたは本当の警察官?」
警察官「さきから、そう言ってますが」
タカシ「何かあったの婆ちゃん。オレオレ詐欺にでも引っかかったの」
千恵子「電話切るよ、忙しいとこ邪魔したね。(受話器を置き)まだ引っかかっていませんて」
千恵子「(少し考えて)お巡りさん、車で来たの」
警察官「自分は自転車で。隠してきましょうか」
千恵子「私がするから、あんたはここでとっ捕まえる準備をしておいて」
警察官、頷く。
ピンポン、と玄関ドアのチャイムが鳴る。
千恵子「来た!早い。馬鹿だね、警察官のチャリが見えんのかいな。確認してからチャイム鳴らせよ、てんだ」
千恵子、玄関ドアに近づく。
千恵子「ハイハイ、待っててね」
千恵子、ドアスコープから除く。
千恵子、中にいる警察官に向かって親指を立てる。
警察官も合わせて指を立て、頷く。
千恵子「さぁ入ってらっしゃい、首を長ぁくして待ってましたわよ」
千恵子、玄関ドアを開ける。
《終わり》