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続・「猫」

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内心、自分勝手な言い分に嫌気が差すも
情けなく縋(すが)る思いで目の前の少年を見詰(みつ)めれば
自分を見詰(みつ)める目と目が搗(か)ち合った瞬間、少年が宣(のたま)う

「嘘 吐(つ)きは閻魔(えんま)大王に舌を引っこ抜かれるぞ」

肩透(かたす)かしもいい所(ところ)だ

多少、否(いな)
大(おお)いに呆(あき)れながら断言する

「貴方(あんた)」
「前回の仮病で舌、引っこ抜かれるね」

心做(こころな)し胸を張る、少年

「其(そ)れは覚悟の上、お前は?」

何が「覚悟の上」だ
何処(どこ)ぞの「武士(もののふ)」だ

兎(と)に角(かく)
自分には「其(そ)の覚悟」はないが

「嘘じゃない、本当」

到頭(とうとう)、上がり框(かまち)に座り込んだ自分に次(つ)いで
屈(かが)み込む少年が深靴(ブーツ)に手を伸ばす

「「牛乳」ないと駄目?」

「「牛乳」ないと細底幼(シチュー)が作れない」

「咖喱(カレー)にしない?」
と、提案した所(ところ)で咖喱(カレー)粉がない

「、然(そ)う」
「、然(そ)うだね」

自分の深靴(ブーツ)を
玄関 三和土(たたき)に揃(そろ)えて置く、少年を盗み見る

若(も)しかして貴方(あんた)なりに気遣(きづか)ってるの?
若(も)しかして貴方(あんた)なりに誤魔化(ごまか)してくれてるの?

自分の足元で
自分の持参した猫缶の残りに舌鼓(したづつみ)を打つ
素知らぬ顔の雉猫(キジトラ)の姿を思い浮かべる

「素知らぬ顔」と言うのは
知っているのに知らない振りをしている表情だ

「猫」の十八番(おはこ)じゃないか

屹度(きっと)、嫌だよね
屹度(きっと)、貴方(あんた)は嫌な気持ちよね

御免(ごめん)
本当に御免(ごめん)

然(そ)うして垂(た)れた前髪の隙間から覗(のぞ)いた
目と目が合った少年が笑う

其(そ)れは滅多(めった)に御目に掛かれない、事もなく
近頃は度度(たびたび)、御目に掛かれる

「笑う猫」に良く似た、微笑み

「寝ても覚めても「お前」と一緒なんだな、僕」

等(など)と
余(あま)りにも無邪気に笑うものだから自分も笑うしかなかった

其(そ)れなら其(そ)れで良い

取り合えず深靴(ブーツ)を
普段使いのバレエシューズに履(は)き替えて「牛乳」を買いに行こうよ

「一緒に買いに行こうよ」

相手の腕を取る也( なり)、勢い良く立ち上がる
誘いを掛ける自分の前で何故(なぜ)か、そわそわし出す少年

「、なによ?」

努(つと)めて冷静に訊(たず)ねるも
慌(あわ)てて少年の腕を放す、其(そ)の顔を覗き込まれる

「、どうしたのよ?」

案の定、安定の無視(スルー)

本(ほん)の少しだが身を退(ひ)く自分に構わず
自身の顔を寄せてくる少年の行動に心臓の鼓動が忙(せわ)しい

少年の息が
少年の熱が

近い!
近い!!
近い!!!

と、身構える自分の横っ面を掠(かす)める
少年の唇が耳元で訊(たず)ねた

「此処(ここ)、本当に事故物件なのか?」

「?はい?」

心做(こころな)し期待したが
心做(こころな)し期待通りだった

何(なに)せ相手は得体の知れない「猫」だ
期待「外(はず)し」はお手の物

て、何を期待したんだ?、自分

其(そ)れは扨措(さてお)き
拍子(ひょうし)抜(ぬ)けの頭に浮かんだ疑問を投げ掛(か)ける

「なんで小声?」

一層(いっそう)、声を調子(トーン)を落とす少年が囁(ささや)く

「聞かれたら困るだろ?、お化(ば)けに」

「!!困らねえよ!!」

盛大(せいだい)に突っ込みたいが
長嘆を(ちょうたん)吐(つ)いて堪(こら)えた自分に気付いた
少年が首を傾(かし)げる

「お化(ば)け」といい
「閻魔(えんま)大王」といい何処(どこ)迄(まで)、お子ちゃまなの?

抑(そもそも)

「んな訳ないでしょ?、嘘よ嘘」

否定しながら(軽く)胸を押し返せば
気怠(けだる)そうに玄関扉に背を凭(もた)れる
少年が、にこりともせずに吐(は)き捨てた

「お前、本当に閻魔(えんま)大王に舌を引っこ抜かれるぞ」

「はいはい」
「嘘を吐(つ)いた自分が悪(わる)うございました」

「もう二度と嘘は吐(つ)きません」

海外法廷映画 宜(よろ)しく
右手を挙げて宣誓(せんせい)する
自分に半目を呉(く)れる少年が執拗(しつこ)くも聞き返す

「本当か?」
「本当なのか?」

「I do」(英語?)
「I do」(何故、英語?)

大袈裟(おおげさ)に頷(うなず)けば
「けっ」と笑う少年が悪戯(いたずら)にも問い掛(か)ける

「僕の事、好き?」

開いた口が塞(ふさ)がらない

然(そ)うくるか
然(そ)うくるなら自分は「切り札(ふだ)」を切るしかない

「「猫」は好き」
「寝ても覚めても一緒に居たいと思ってる」

此処(ここ)ぞとばかり少年の「主張」をお返しした

途端(とたん)、自分の言葉に気怠(けだる)そうに項垂(うなだ)れる
少年が其(そ)れは其(そ)れは照れ臭そうに笑うと

「にゃー」

と、鳴いた(可愛いかよ!)
作品名:続・「猫」 作家名:七星瓢虫