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続・「猫」

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「辞(や)めま、」

「せん!」と言い終わる前に
組む腕を解(と)く上司が腕を振って少女の言葉を遮(さえぎ)る

「其奴(そいつ)は良い」
「斯(か)くいう自分は子会社に転勤だ」

何という衝撃発言(カミングアウト)

『「バレても」』
『「バレてなくても」』

先程の、上司の言葉が頭の中をぐるぐると駆け巡る

若(も)しかして「バレた」?!
と、血の気が失せる少女とは裏腹、上司があっけらかんと付け足す

「栄転だ、栄転」

此処(ここ)だけの話
実は前前(まえまえ)から其(それ)となく打診はされていた

身重の妻を気遣(きづか)うのか
義理の実家近くの赴任先を提示されていたが
唯唯(ただただ)、「子猫」と別れるのが嫌で(笑)返事を先延(さきの)ばした

元元(もともと)、俺から「別れ話」をする事はない

都合の良い「関係」を
都合の付く限り、続けたかっただけだ

当(とう)の「子猫」に「別れ話」をされた以上
此処(ここ)に留(とど)まる意味はないと思ったが
少しばかり早まったかな?

然(そ)う思うも矢張(やは)り「猫」の存在は無視出来ない

「其(そ)、」
「其(そ)れは、おめでとうございます」

急展開に戸惑(とまど)うも祝辞を述(の)べる
少女に上司が呵呵(かか)笑う

「「猫」と仲良くやれよ」

少女の足元で
少女の持参した(らしい)猫缶にがっつく
雉猫(キジトラ)を見 留(と)めて何とも殊勝(しゅしょう)な言葉を贈るが
お互い「雉猫(キジトラ)」の事ではないのは承知の上

「、違う」

当然、否定する少女を
当然、一蹴(いっしゅう)する上司

「違くないだろ?」

「君自身、違くても」
「彼(あ)の「猫」は本当に君の事が好きだよ」

でなければ頭 等(など)、下げない
でなければ「不倫相手」の自分に頭 等(など)、下げない

『「此奴(こいつ)が何時(いつ)もお世話になっています」』

良く言えたもんだ

自分が言わせたんだ
目の前の少女が言わせたんだ

彼(あ)の「少年」に無慈悲にも言わせたんだ

「だろ?」

然(そ)う、上司に促(うなが)され
愈愈(いよいよ)、諦(あきら)めた少女が大きく頷(うなず)く

上司バレといい
小母(おば)さんバレといい
同僚女性が「付き纏い行為」と勘違いする程(ほど)

「猫」の恋心はだだ漏(も)れなんだ?

如何(どう)にも溜息を隠し切れない少女を余所(よそ)に
途端、上司が唇を尖(とが)らせる

「何(なん)か癪(しゃく)だな」

然(そ)うして餞別(せんべつ)代わりとばかりに
手にしたままの(少女の)御握(おにぎ)りの包装フィルムを剥く也(なり)
一口、頬張(ほおば)る

「君、「子猫」になってよ」
「然(そ)うしたら何処(どこ)へでも連れて行ける」

言った側(そば)から自己嫌悪だ
其(そ)れを誤魔化す為、御握(おにぎ)りを貪(むさぼ)り続けるが
此方(こちら)に顔を向ける少女の視線が痛い(笑)

殆(ほとほと)、呆れ果てる少女の前で
御握(おにぎ)りに舌鼓(したつづみ)を打つ上司が今更のように呟(つぶや)く

「御握(おにぎ)りの選択(チョイス)が「塩」って」

少女は此処(ここ)ぞとばかり
幾分(いくぶん)、聞き飽(あ)きた台詞(セリフ)を和声(ハモ)る

「相変わらず「君」って面白いね」←上司
「相変わらず「君」って面白いね」←少女

暫(しば)しの沈黙

少女の足元で
少女の持参した猫缶を完食した雉猫(キジトラ)が
(何の?)空気を読んだのか

「にゃー」

と、鳴いた

作品名:続・「猫」 作家名:七星瓢虫