むぎゅう!
このアシダカグモはN田さんの家に棲んでおり、N田家メンバーの顔も声も知っていた。
さて、運命のこのとき、このアシダカグモは大学生のN美ちゃんの部屋にいた。獲物を探してうろうろとしながらたまたまベッドに上がり、たまたま布団の中――掛布団と敷布団の間――へと潜り込んでいた。
そしてそこに、N美ちゃんが戻ってきた。
「よっこらしょ」
戻ってきて、いきなり布団の上に寝っ転がった。
「むぎゅう! どど、どいてえええN美ちゃああああん!」
体を圧迫されながら、アシダカグモは、N美ちゃんに聞こえない悲鳴を上げた。
「ぎゃあああああ死ぬるうううううっ、うわあああああああ」
N美ちゃんは、もちろん、知る由も無い。
アシダカグモの意識は遠のいていった。
「この恨み晴らさでおくべきかあっ……く、苦しめてやるうっ」
そして、か細くも強い呪詛を吐いた。
「体も心も圧迫して、めちゃくちゃ苦しめてやるうっ……」
こうしてこのアシダカグモは、未来のN美ちゃんの「痩せてた頃には着れた七号の服」に転生した。
(了)