ひとりしずか シーン2「料理」
シーン2「料理」
「(一人暮らしをしてわかったこと・・・)」
冷蔵庫を開ける音、ビニール袋を掴む音
「うげっ、もう傷んでる…。 はぁ…。」
「(野菜はすぐ痛む、ということ)」
「(一人暮らしを始めて3ヶ月、未だに野菜をダメにすることがある。
たちまちに痛む野菜たちを、お母さんはどうやって管理していたのか、すごく不思議に思う。)」
ゴミ箱の蓋を開け、野菜を捨てる音
「(ゴミ箱に丸々捨てられる野菜たちを糧とし、次こそはしっかり使い切ろうと決意する。」
「(一種類、食材が消えてしまった。今更買い物へ行くのも億劫だ。
残された食材は、玉ねぎと人参と)」
冷蔵室を開ける音
「豚肉かぁ…」
「(カレーを作るにも、ジャガイモが無いのは寂しい。うーん。よし。)」
「チャーハンにしよう」
レンジを開ける音→硬い物を置く音→レンジを閉める音→スイッチ音「ピッ」
まな板を置く音、その上に包丁を置く音
「(微塵切りをしている時。 これが料理をしていて、一番好きな瞬間。
いかに細かく切れるかということだけに集中する。
この時だけは、嫌なことも疲れたことも、忘れられる。)」
「(特に好きなのは玉ねぎのみじん切り。離れてしまわないギリギリを狙い、そーっと刃を入れる。均等に切れ込みを入れたら、形を上手く保ったまま一気に切り込む。パラパラと玉ねぎが離れていく手応えが、とても気持ち良い。)」
レンジを開ける音→レンジを閉める音→ラップのクシャっていう音
「(あとは解凍した豚肉を細かく切り、いざフライパンで炒める準備へ)」
コンロを点火させる音
「(そういえば、なんでうちのチャーハンには人参が入ってるんだろう。)」
「(お店に行ってチャーハンを食べる時もあるけれど、人参が入ったものはあんまり見ない気がする。)」
「(もしかすると人参入りチャーハンは、うちのオリジナルレシピなのかもしれない。)」
「(お母さんから教わって、お母さんはおばあちゃんから教わって、おばあちゃんはひいおばあちゃんから教わって…あれ、いつ頃からチャーハンって
あったんだろ。)」
「(今日の私みたいに他の野菜が使えなくなって、余ってたからチャーハンに入れて、そっから馴染んじゃったのかな。)」
「今度理由聞いとこ」
作品名:ひとりしずか シーン2「料理」 作家名:平塚 毅