それとりおじさん
ある日、良いおじさんは、山に芝刈りに出たところ、夕立ちに降られてしまいました。
仕方無く木の下で雨が上がるのを待っていると、にぎやかな声がし始めます。
良いおじさんが見ると、鬼たちが集まっていて、宴会をしているようです。
その様子があまりに楽しそうだったので、雨が上がるのをただ待つことに飽きた良いおじさんもつられて出て行って、自分の舞を踊ってしまいました。
はたして、鬼たちの反応はと言えば、何と大喜び。
「いや~笑った」
鬼たちは、良いおじさんに言いました。
「おまえは本当に愉快だ。褒美に何かくれてやろうと思うが、何か希望はあるか?」
良いおじさんは良い性格だったので、強欲なことは一切考えません。「特にありません」と答えようとしましたが、そういえば、最近妻から「あんた、ほうれい線が目立ってきたね」「目じりのしわもだね」などと言われ、イケメンを自負してきた良いおじさんもどうも気になっていたところでした。
「それでは、しわを取って下さい」
鬼たちは、意外だという顔をしました。
「そんなことがいいのか」
「はい。たびたび悩まされているのです」
「悩みか~。よかろう!」
鬼たちは笑うと、良いおじさんのしわを取ってやりました。
こうして良いおじさんは悩みから解放され、しわが無くなった脳でもって生涯幸せに暮らしました。
(了)