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天藍ノ都  ───天藍ノ金陵───

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天藍ノ空


 澄み渡る空の、暖かな春の日。

 藺晨が金陵の蘇宅を訪れる。
 錦の大きな包みを抱えて来た。

 いつもの事ながら、出入りは派手。
 藺晨は、右手に二つの胡桃。
 胡桃を器用に玩弄物にして、大きな包みを左手に、蘇宅の塀を飛んで越えてきた。
 何か良い物が入っているらしく、藺晨は笑いながら、書房の前庭に降りてくる。

 蘇宅には、長蘇、そして江左盟の配下、黎綱。
 長蘇は、黎綱から、報告を受けていた。

 黎綱は、藺晨の扱いも手馴れたもので、笑いながら言う。
「今日も派手な登場ですね、、若閣主。
 それにしても、何ですか?、その包みは??。
 宗主を喜ばそうと?、、、、あははは、ご苦労さまです。
 、、、、、ぁぃタッ、、。」
「うるさいぞ!、黎綱!。」
 藺晨が、手に持っていた胡桃の一つを、ぴしりと黎綱の額にぶつけた。

「せっかく、美味い胡桃を見つけてきたのに、黎綱にくれてしまったでは無いか!。
 まぁ、良い。
 後で蘇宅に、どっさり届く。
 黎綱、払っておけ。」
 藺晨はそう言いながら、ずかずかと上がり込み、書房の長蘇の側へと座った。

「は??、、若閣主、蘇宅の銭で払うと??。」
 胡桃が当たった額を摩りながら、黎綱が言う。
「細かい奴だな〜、大物になれぬぞ。」
「蘇宅のツケで買うのは、止めて下さいよ!。
 琅琊閣の若閣主ともあろうお方が、他人の銭を当てにするなんて。
 恥ずかしく無いのですか?。」
「何ぃ〜!。
 、、、良いだろ?、長蘇。」
 黎綱に小言を言われ、藺晨は長蘇に目配せをした。

「、、払っておけ、黎綱。」
 溜息をつきながら、長蘇が黎綱に言った。
「流石は麒麟の才子!。」
「甘すぎますよ〜、宗主〜!。
 この間も若閣主ときたら、妓楼のつ、、、ぃてッ!。」
 藺晨は、手の中の残りの胡桃を、黎綱の頬にぶつける。
「黎綱!、これしきの胡桃、避けられぬとは、鍛錬不足だぞ。ぁぁ??。
 これで長蘇の護衛が務まると?。
 、、、、ん、最近太ったか?。」
「グヌヌ、、、。太ってません!!!。
 、、、、ホンノチョットダケデス。」
 ぐうの音も出ない黎綱。

「その辺にしておけ、二人とも。
 、、きりが無い。
 藺晨、用があって来たのだろう?」
 長蘇が二人の会話を止めた。
 この二人は、止めねば、きりが無いのだ。

「ふふふ、、、そうそう、この件だ。」
 そう言うと、藺晨は、ゆっくりと錦の包みを解き、広げた。
 中からは、色とりどりの見事な、薄地の絹生地が現れた。
「なんと!。」
 
「見事な綾絹と紗(うすぎぬ)ですね〜。どの産地の絹ですか?。
 おお!!、なんと!!、衣に仕立ててある。」
 黎綱は、、一枚を広げて驚く。
「、、なんと、軽い!!!。」

「琅琊閣産だ。」
 自慢げに話す藺晨。

「何?、琅琊閣産だと?。
 藺晨、いつから織物屋になったのだ?。」
 長蘇も衣に興味を持ち、黎綱に渡された衣に触れ、感触に驚きながら言った。
「ふふふ、、、。
 琅琊閣には優秀な者が揃っている!。
 実は絹では無いのだ。我が琅琊閣で、特殊繊維を開発してだな〜、この人造絹を作ったのだ。
 虫も食わぬし、保温にも優れている。
 非常に薄い布地だが、軽くて温かい。
 長蘇の酷い寒症の体に、これは良いと思って持ってきた。
 ぁあ??、、、それにしても長蘇、今日は一体何枚着込んでいるのだ?。」
 藺晨の手が、長蘇の衿元に伸びるが、長蘇は、体を捻って逃れた。

「煩いッッ、、見るな!。」
 長蘇は衿元に手を置いて、藺晨の視察から逃れようとしていた。
「見たところ上衣は二枚程か?。それ程寒い日でもあるまいに、、。」
「、、衣が三枚と肌着が二枚です。」
「、、黎綱!!、、、ダマッテロ!。」
 長蘇に叱責され、黎綱は口を手で塞いだ。
「そんなにか!!!、そんなに着込むから動きにくくて、動かぬから体が温まらぬのだ。
 人の助けがないと立ち上がれぬ程、着込むのも如何なものか。
 肌着以外、脱いで、うちの人造絹を着てみろ!、驚く程温かいぞ。
 そら、脱がせてやる!!!。」
 防御虚しく、長蘇の手は払われ、帯を解かれる。

「馬鹿ッッ!、こら藺晨ッ、止めないかッ!!。
 あああああ━━━━ッ、、、。」
 重ね着した衣を、藺晨に、ひん剥かれる長蘇。
 忽ち、あられもない肌着姿に、、、。

「はぁっはぁっ、、、、黎綱、、長蘇は上衣を五枚も着込んでたぞ、、呆れた。」
「宗主、、驚きました。宗主の着衣は、私が全部、管理していると思ってたのに、更に二枚も、、。
 一体いつ、着たんですか。誰の手助けも無く??、自分で???。」

「、、、さ、、、寒、、ぅッッッ、、。」
 寒さに震える長蘇。
 凍える身体を、両の腕で抱き締めていた。
 唇を噛んで、恨みがましく見上げた長蘇の瞳は、悔しさに潤んでいる。
「あああ、、宗主、、、ドキドキ、、、。」
「ほぉぉ、、。」
 黎綱は、下着姿の長蘇を、何とかしようとしていた手を止め、寒さに震える長蘇を、美しいと眺めていた。
 藺晨もまた溜息がもれ、震える子鹿の様な長蘇を、『何と麗しい』と抱きしめて温めてやりたくなったが、、、程なく我に返る。

「ほら、これを、、。」
 そう言うと、藺晨は薄桃色の綾絹の衣をさ──ッと広げ、長蘇に羽織らせる。

「、、、これはッ、、、、何と不思議な、、温かい、、。」
 衣を羽織り、藺晨が前を閉じると、更に温かみが増した様子で、険しい長蘇の表情が、柔らかくなった。
「ふふふ、、、だろ?。
 大変だったのだ、ここまでの物にする迄が。
 寒症に苦しむ長蘇を、助けてやりたい一心で、頑張ったのだ。
 長蘇が普段使う、上質な毛皮よりも、軽くて温かいだろう?。」
「、、不思議だ、、こんな、絹よりも薄い衣で、これほど温かいとは、、。」
 長蘇を立ち上がらせて帯を締め、、更にもう一枚、薄灰色の紗を羽織らせた。
 
「布の素材に、発熱作用があり、着ているだけで温まる。重ね着をしたら、更に温かく、、な?、だろ?。」
「ああ、、、本当だ、、温かい。」
「長蘇の顔色が良くなった。温まってきたのだな。
 良かった。」
 温かさのせいか、常に何処か張り詰めている様な、長蘇の表情が和らいだ。
 滅多に見ない、長蘇の柔らかな表情に、藺晨も嬉しくなり、目元が綻(ほころ)ぶ。
 だが、長蘇の出で立ちを見て、俄(にわか)に渋い表情に変わった。

「長蘇!、衣は良いが、書生風の団子に、そのもったりした玉の冠の髪形が駄目だ!!」
「は?。」
 黎綱も頷いて、渋い表情に、、、。
「ぁぁ、宗主、、、、ホントに駄目ですね〜。」
「何だと黎綱!!。」

「長蘇、安心しろ!、ダサいお前を、私が見目秀麗な美しい男にしてやる。」
「は?、私がダサい??。」

「ぁぁ、楽しそうです。私もお手伝い致します。」
 にこにこと黎綱、長蘇の着せ替えを楽しむ気満々。
「おいっっ!、何か勘違いしてないか??、黎綱?。」
 長蘇が黎綱を窘(たしな)めるが、黎綱は意にも介さない。

「若閣主!!、帯と装飾品を出してきますね!!。