二〇二三
青年が恋人に言いました。
「俺さ、良い初夢見たんだよ~」
「こんなご時世だから、ありがたいことね~。どんな夢?」
恋人が気だるそうに付き合うと、青年はニコニコしながら続けました。
「うん。ベタに聞こえるかもしれないけど、富士山の夢。山頂にいる夢見た」
「へえ~。でも、その山頂が富士山のだって分かるの?」
「あれは富士山だよ。テレビとかユーチューブとかで見るのと同じだった。俺は、神様が見せてくれたんじゃないかと思う」
「確かに、見ようと思って見れるものではないよね」
「俺が今年、すごい達成をするってお告げだよ!」
「こんなご時世に頼もしい~。宝くじでも当ててよ~」
青年はズッコケるような動作をして、それから言いました。
「俺の実力に期待するとこでしょ!」
恋人は笑顔を返しました。
「すごく喜ばせてしまったみたいで、少し申し訳無い」
ふたりの会話を聞いていた神様がつぶやきました。
「夢の富士山を少し小さくしてあったんだけど……」
(了)