通勤は戦いだ
診察室に入ると、専門医が待ち構えていた。
「先生、こんどはどこに出かけたんですか?」と聞かれたが、黙っていた。
専門医は、それ以上興味がないらしく、
「ベッドに寝てください」と指示して、さっそく、右膝に注射器を向けた。いつも以上に怖い顔だった。
私は眼を閉じていたが、「チクリ」としたので、眼を開けると、注射器の中に黄色い透明な液が三〇ccぐらい入っていた。
膝の腫れはひいて、今までの鬱陶しい気分が消えた。
目の前に立っているイカツイ顔の専門医が、神のように見えた。
私は何度も礼を言って診察室を出た。
自動精算機の「オダイジニ」という声が、優しい看護師さんの声のように聞こえた。