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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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ちょっと高すぎたのではないか

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土曜日は山へ登る日なのか



 昔から土曜日は特別な日ときまっている。順調なら次の日は日曜日だからだ。
日曜日を前にして、一週間でいちばん心安らぐ日のはずだ。
誰しも、土曜日はゆっくり羽を伸ばしたい。

 ところが、私の病院の経営方針は、一般の人たちが抱く生ぬるい感覚とは相いれない。
「土曜日はふだんの日に来られない患者さんがたくさん来る日だ。そういう人たちのために働こう」
という誤った考えをもつ上層部が多い。
そのため、私も毎週ではないが、土曜日、仕事に駆りだされる。上層部はきちんと休んでいるはずだ。

 そんな土曜日の朝だった。
いつもの駅の、下りホームで電車を待っていた。
ホームの様子は普段とまるで違う。
学生は一人もいないし、いつもと違う種類の人たちがいる。
違う種類の人たちといっても、とくに怪しい人ではないと思うが、
見慣れた人とは違うのだ。

 ほとんどは、中年以上の男女である。
特に女性(オバサンと呼ばせてもらっていいのだろうか?)が多い。
申し合わせたように、黒いリュックサックに、山歩きのシューズ(トレッキングシューズというのか、スニーカーより丈夫そうな、底の厚い靴)を履き、登山帽をかぶっている。

 〈そうか、土曜日は山へ登る日なのか〉私は思った。
私は病院へ行くのに、一般の人たちは山へ登るらしい。
大きな違いだ。どこで、そんな違いができたのだろう?