ちょっと高すぎたのではないか
病院の前が国道なので、車の往来が激しい。
慣れれば波の音に聞こえるのだろうが、慣れてないせいか、道路の上に寝ているようだ。
酔っ払いらしい数人の男がわめいている。
私が今夜はじめて「院長」になったのを知っているのかもしれない。
普段でも寝つきがよくないほうだが、うるさくてよけい眠れなかった。
夜中にPHSが鳴ることを警戒していたが、朝までついに鳴らなかった。
電源を切っていたわけではない。
私に連絡すると、トラブルが大きくなることを恐れて、現場の医師が連絡しなかった可能性が考えられる。正しい判断だ。
寝不足のまま朝の4時になった。
いつもよりだいぶ早いが、体調を整えるためラジオ体操をする。
寝不足のせいかバランスがとれず、ジャンプすると、よろめいて壁に頭をぶつけた。
このまま意識を失えば、入院する事になる。
勤務時間中に負傷して入院した「院長」として、病院の歴史に残るところだった。
しかし、意識は正常のままで額に小さなコブができただけだった。
作品名:ちょっと高すぎたのではないか 作家名:ヤブ田玄白