帰りの電車で人身事故だった
こういう時は、正確な情報を迅速に伝えてほしい。
最初の車内アナウンスでは、確かこう言った。
「ただいま現場からの連絡では、レスキュー隊が作業中とのことです。今しばらくお待ちください」
〈もう少しだな〉と私は期待した。
ところがそれから一五分ぐらいして、
「ただいま現場からの情報では、今、レスキュー隊が現地に到着して、救助作業に取り掛かったとのことです。しばらくお待ちください」
〈これはなんだ。ひどいミスではないか。最初のアナウンスはなんだったのだろう〉
もし私が病院で、
「最初にご説明した時、良性の腫瘍と言いましたが、詳しく調べたところガンでした」と言ったら、私も院長もしばらく病院に行けなくなる。
それからだいぶ経って、またアナウンスがあった。
「ただいま、レスキュー隊の作業が終了しました。これから、警察の現場検証が始まるとの連絡が入りました。三〇分ぐらいかかる見込みですので、お忙しいところ申し訳ありませんが、しばらくお待ちください」
このアナウンスの前に、実際には、
「警察官が現場検証のため、警察署から出た」という情報も入ったはずだ。
しかし、そのアナウンスは省略された。警察署から出ても、都合で家に帰ってしまう人もいるからだろう。
作品名:帰りの電車で人身事故だった 作家名:ヤブ田玄白