「産業医」の研修会に行った
医者という職業
病院にくるのは、病院の職員以外には、身体や頭の調子が悪くなった人だ。元気な人はあまり来ない。
ゴルフの調子の悪い人はゴルフの練習場へ行くし、車の調子が悪い人はガソリンスタンドへ行く。病院へは来ない。
私は職員として病院に来ているが、膝や歯の調子が悪いため、患者としても病院にかかっている。
医者の仕事に全力投球できないもどかしさを感じながら、膝と歯の治療に全力投球している。
医者の仕事がほかと違うのは、相手が弱い立場にあることだ。
患者さんの中には私より強い人は多いが、気が強いとか根性が悪いという意味で、身体はどこか弱いところがある。
相手が弱みを持っているのは、医者以外に、警察官や検事、お寺の坊さんや教会の神父さん、税務署の職員などである。
相手を見下ろしているのだ。
自分は偉いのではないかという錯覚に陥りやすい職業だ。
そのことを医者はよく心に留めておかなければならない。
医者や警察官、坊さんなどの、もう一つの共通点は、団体旅行に行くと酒癖が悪いことだ。
日頃は、世間の眼が厳しいためだろう、プライベートになるとハメを外す人が多い。
もちろん、ほかの商売でも酒癖の悪い人はいる。
この場合は、社会的規制は無関係だから、生まれつき酒癖が悪いのだろう。
作品名:「産業医」の研修会に行った 作家名:ヤブ田玄白