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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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「産業医」の研修会に行った

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故郷へ帰った (一)



 金曜日の夜、仕事が終わって、病院からバスに乗った。駅に向かうのだ。
と、後ろの座席から聞こえてくるのは・・・・。
懐かしいふるさとの訛り。

 啄木の歌にもある。
「ふるさとの訛り懐かし停車場の人ごみの中にそをききに行く」
疲れていたし、混んでいたので、人ごみの中に、そを聴きに行く余裕はなかった。
じっと聞き耳をたてていると、二人のオバサンだ。
話の中に私のふるさと、○○という地名が何度も出てきた。

〈思った通りだ。あの独特の訛りは、あそこで生まれ育った人間なら、ちょっと聞けばすぐにわかる〉
私は懐かしさのあまり、ここが、病院のある町ではなく、ふるさとのような気持になった。
二人はおそらく、私の病院に入院している親しい人を、見舞いに来たのだろう。
近くのホテルに滞在しているのかもしれない。

 話は、「安い」「高い」ということに集中していた。
「あの病院、個室料金一万円もとるんだネエ。○○市よりずっと高いよね。カフェテリアのコーヒーもまずかったネ。○○市の△△亭は、高いけどおいしいよネ。こんど□□さんに連れてってもらおうと思ってたけど、入院しちゃったからネ。しばらく駄目だね」などと話していた。

 バスから降りた二人は、六〇代後半ぐらいに見えた。
もう一人連れの男がいて、三人で駅前のホテルに向かった。
私は三人について行きたかったが、知らない人だ。遠慮して改札口に向かった。
それにしても、こんな場所で、ふるさとの人々に会えてうれしかった。