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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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続 金曜の夜、人間は二つに分かれる

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 鶴瓶は、運転免許だけでなく、医師免許証も持っていない「医者」(ニセ医者)だった。
それがバレそうになって、姿をくらましたのである。
父親は医者だったし、自分も製薬会社のМR(医薬情報担当者)をやっていたので、医者の技術は見よう見まねでできた。
どこで覚えたのか、胃カメラは得意のようだった。(私よりよほど上手い。)
その上、気持ちが優しいので、村人から尊敬され頼りにされている。
難しくない病気なら、なんとか治せるし、難しい病気は2時間ぐらいかかる町の病院に紹介する(このへんの手口は、私とよく似ている)。

 さまざまなエピソードの中で印象に残ったのは、「ご臨終」の場面だ。
村の古老が長患いしていたが、ある時、呼吸が止まった。
鶴瓶が行くと、親類縁者が、枕元に集まっている。
息をしていない。
〈ご臨終だ〉と思った鶴瓶は、古老を布団から抱き起こし、
「よう頑張ったなあ」と涙を浮かべて、ギュッと抱きしめた。

 とその時、古老の口から、詰まっていた何かがポンと飛び出して、息を吹き返す。
鶴瓶は、苦笑い。照れ笑い。
だが、村人は、鶴瓶の処置で古老が助かったと、
「名医だ。名医だ。万歳、万歳」と叫ぶ。