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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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『刑務所の中』をみた

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カンチューハイを車内で飲む男



 通勤の電車では、空いていると飲酒する客がいる。
以前、金曜の夕方、『アサヒスーパードライ』をグビリと飲んだしぶいオトーサンに会って、「完全に負けました」と思った話(「金曜の夜、人間は二つに分かれる」参照)を書いたが、今回は、水曜日の午前中のことだった。

 その日都内で用事があって、上りの電車だった。
午前十時ごろ、ピークを済んで、車内は比較的空いていた。

 男は三十代に見えた。もう学生ではないだろう。
私の向かいの席に腰をおろした。
私は優先席だから、彼も反対側の優先席だ。(彼にその資格はないはずだ。無資格者による優先席占拠である)

 男は本を読みながら、カンチューハイを飲んでいた。
カンチューハイは居酒屋などで出す、「サワー」とよばれる、焼酎を炭酸とレモンなどで味付けしたアルコールである。

 飲んでいるのがカンチューハイで、カンビールでないところが重要だと思う。
カンチューハイは、同じアルコールでありながら、カンビールほど、はっきり「アルコール飲んでます」という雰囲気にならない。
アルコール度はビールより高いが、雰囲気的にはジュースと紛らわしいところがある。
男は、その盲点を衝いているのだろう。知能犯かもしれない。

 読んでいる本も、漫画ではなかった。文庫本か新書だった。
ヘアスタイルは長髪。一見、芸術方面の感じだ。
この時間、都心に向かう電車で、カンチューハイを飲みながら、この男はこれからどこで何をしようとしているのだろうか?