カンチューハイを車内で飲む男
話のわかるクレーマーでよかった
二回目の「夜間院長」がまわってきた。
今日は何となく胸騒ぎがする。
夜の8時半ごろだった。
救急外来のナース、Мさんから私のPHSに連絡がはいった。
「先生、今、外来に電話がきてるんですけど、出てくれませんか?
とっても態度の悪い人で、私の手に負えません。この電話とってくれませんか」という。
〈そんなこと、『夜間院長』の仕事じゃないだろう。お前が自分で片付けろ!〉と怒鳴りつけたかった。
が、人格者の私(弱気な私)は、「そうか。しようがないネ」と言って電話をとった。
相手は男だった。いきなり、こう言った。
「あんた、名前なんてエの?」
電話に出る前からドキドキしていた私は、
「ハ、ハイ。ヤブタです。」と答えた。
「そうか。あんたは素直に名前いってくれたネ。ヨシヨシ、これから行くから待ってろ。言いたいこといっぱいあるから、たっぷり時間とって待ってろ」
と電話は切れた。
作品名:カンチューハイを車内で飲む男 作家名:ヤブ田玄白