カンチューハイを車内で飲む男
どうも、会話が盛り上がらない。
彼が何かに悩んでいる証拠だ。
心の治療を専門にする医者が悩んでいたら、患者さんが困るだろう。
彼に立ち直ってほしいと思った。
「マ、一杯いきましょ」
「ウン」
彼は中ジョッキを三杯飲んだ。
私はジョッキ一杯とアツ燗二本だった。
今日は彼にカウンセリングを受けようと思ったのだが、彼のカウンセリングをしてしまった。
しかも、無料だった。
私は、自分より無口な人を見ると、心配になってだまって見ていられない性分である。
作品名:カンチューハイを車内で飲む男 作家名:ヤブ田玄白