カンチューハイを車内で飲む男
二次会は隣のバーでカラオケ大会だった。
皆ベロンベロンである。
次々に歌ったが、演歌ばかりだ。
シャレた歌を歌う人は一人もいない。
マイクが壊れそうな大声で、何を歌っているのかわからない人もいた。
N君はお得意の『港町ブルース』を歌っていた。
七番まである長い歌で、長時間マイクを離さなかった。
元銀行員のせいだろうか、しっかり元をとっている。
皆はあきれたのか、誰も聴いていなかった。
翌朝は二日酔いだった。
フラフラだったが、午後から墓参りに行った。
律儀な私は、実家のほかに親戚の墓もまわった。
家に帰ると、右膝に違和感を覚えた。
少し腫れていた。古傷をまた痛めてしまったようだ。
自宅に戻ると、猫が嬉しそうに出迎えてくれた。
私に会ったのも嬉しかったと思うが、エサをもらうのはもっと嬉しかっただろう。
私はシャワーを浴びて、いつもの部屋でぐっすり眠った。
作品名:カンチューハイを車内で飲む男 作家名:ヤブ田玄白