カンチューハイを車内で飲む男
「赤字部門再建会議」
病院は本来、病気を治療し、病める心を癒す場所だ。金を儲けるところではない。
だが、病院がつぶれると困るので、経営も健全でなければならない(らしい)。
毎年、今頃になると、各診療科の収支が報告される。
いいところは嬉しそうだが、そうでないところは、辛い思いをする。
先日、「赤字部門再建会議」という会議が招集された。
メンバーは院長以下、病院の上層部(経営トップを含む)だ。
私はなるべく目立たない場所に腰かけたが、「どうぞ」とすすめられて、真中に座らされた。悪い予感がする。
司会の院長が、口火を切った。
「エー、本日はお忙しいところお集まりいただきましてありがとうございました。
ご存じのように、昨今の医療経済の低迷によって、うちも、たいへん厳しい情勢でございます。
皆さん、よく頑張って下さって、全体としては、予算をクリアしそうですが、いくつかの科は、いまひとつです。そこで、例としてお出しするのは大変恐縮なのですが、○○内科を参考例として、お示ししたいと思います」
○○内科とは、私の科である。これは大変なことになった。
作品名:カンチューハイを車内で飲む男 作家名:ヤブ田玄白