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　仮歯を外すのは、若い歯医者には難しいのだろう。
今日の若手も、金属の器具で歯茎を擦ったため、私は思わず身体をのけぞらせた。
またも左手が間に合わなかった。
痛いときに左手を上げるのは、理論的には正しい方法だろうが、実際にはあまり役立たない。やはり、噛み付くか蹴飛ばすかしたほうが、わかりやすいと思う。
しかし、その後は順調に進んで、干物の臭い以外は、特に問題はなかった。

　診察台から降りて、担当医の顔を見ると、まだ初々しかった。
坊主頭で背が高い。
私は丁寧に「ありがとうございました」と礼を述べたが、彼はペコリと頭を下げた。
高校野球の補欠のような印象だった。
　部屋に戻って、念のため口の中を点検したが、干物の骨など不審なものは発見されなかった。