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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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感謝せずにはいられない

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 仲の良かった元銀行員のN君は、顔がピカピカして、眉も黒々としている。
うらやましくて、
「元気そうだナア」と言うと、
「ゴルフばっかりやってるからね」とてれくさそうに言った。
〈いい暮らししてるナア〉と、私は心底うらやましかった。
〈私もいつか、ああいう優雅な生活を送れるようになるのだろうか?〉

 若い時は全員が若いのだが、年とると個人差が大きくなる。
平均すると年老いていくが、中にそうでもない人もいる。
髪は真っ黒で、表情も明るく、若そうに見える。むろんそう見えるだけで、中身は大して変わらないのだろう。
それでも、なんだか羨ましい気になる。

 幼友達のDチャンは、これで三人目の奥さんを迎えたとのことだ。
一回目は「若気の至り」ということだった。
二回目は、美人の奥さんを病気で失った。
三人目はそれほど美人ではないが、お互いに気を遣いながら平和に暮らしていると言っていた。

 名刺を貰ったが、清掃会社の「専務取締役」と印刷されていた。
他愛ない昔話をしながらニヤニヤしているDチャンから想像できないが、昼間は真面目に仕事しているのだろう。
奥さんを三人も取り替えたことについて、もう少し詳しい話を聞いてみたかったが、昔と違って落ち着いた感じのDチャンに、それ以上立ち入ったことを聞くのも失礼だろうと思って、黙って飲んだ。