最後の「夜間院長」だった
歯医者さんは指をきれいに洗ってほしい
今日こそ部長が治療してくれるだろうと思って歯科の診察室へ入った。
ところが、今日も部長は「助手」で、治療は若い歯医者だった。
〈部長の地位は本当に大丈夫なのだろうか?〉
今日の担当は、前回の、将来有望な若手ではなかった。
彼は今日いなかった。
〈どうしたんだろう? 私を治療した時の失敗が原因でクビになったのだろうか?〉
あの時「アチッ」と言わなければよかったのかもしれない。
今日の担当が、有望な若手でないことはすぐわかった。
声が低かったし、私の口に入れた指の臭いが違っていた。
魚の干物の臭いがしたのだ。
朝、干物をむしって食べたのかもしれない。
作品名:最後の「夜間院長」だった 作家名:ヤブ田玄白