最後の「夜間院長」だった
「看護師ロボット」は、つくば市(茨城県)にある「産総研」という独立行政法人の研究所で開発された。
私が驚いたのは、ロボットの表情が人間にかなり近い事だ。
以前に、どこかの大学で、医学生の教育用に開発された「患者さんロボット」を見たことがあるが、それと比べたら、雲泥の差だ。
瞬きしたり、ほほ笑んだり、顔の表情筋の微細な動きがよく研究されている。
これなら、夜道で会ったら、ほんとうの女性と誰もが思うだろう。
淡いピンクの制服を着て、医者の後に腰かけている。(T病院での取材だった。)
患者さんの感想は概してよかった。
「やさしくほほ笑んでいるので、(医者一人と対面しているよりも)ワンクッションあるような感じで、気分が楽でした」と言っていた。
「看護師ロボット」は今のところ、とくに何か仕事をするわけではないが、そのへんにいて、患者さんの気持ちを和ませる効果を狙っているらしい。
ロボットは、医者の表情を感知して、それと同調するように設定されている。
医者が笑えば、ロボットもつられて笑顔になる。
その画面に出ていた医者は穏やかな人だったので、ロボットの表情も和やかだったのだろう。
もし、いつも険しい顔をしている医者だったら、ロボットもそういう顔になるらしい。医者の人間性が大切なのだ。
作品名:最後の「夜間院長」だった 作家名:ヤブ田玄白