最後の「夜間院長」だった
それでも、出席してよかったと思うことがある。
研修医の頃、たいへんお世話になった指導医(「オーベン」という)で、大好きだったO先生に会えたことだ。
数十年ぶりだったが、若いころの面影がそのまま残っていた。
それと、後輩のR君(私が「オーベン」で、彼は「ネーベン」)。
R君は当時から大物のような風格はあったが、実行力がなかった。
やるべきことをやらずに、いつも教授の回診で怒られていた。
それ以来の再会だったが、相変わらずボーっとした感じだった。
人間は二〇代が五〇代になっても、本質的に変化しないものだ。
R君だって、その後いろいろ経験を積んで、仕事や家庭で活躍しているはずだ。
それでも、昔のオーベンの前では、どんくさいネーベンに戻ってしまう。
これが同窓会のいいところかもしれない。
料理は「ホテル」のわりには、質量とも不満足だった。
出席者の年齢を考慮して、噛みにくいものは出すべきでない。
帰り際、会の最初に撮った集合写真が、もう出来上がっていた。
さっそく封筒を開けてみたが、写っているのは年寄ばかりだ。
〈おかしいな、私は写ってない〉と思った。
ところが、明るいところで見ると、前から二列目に私と同じネクタイをしめた高齢者がいた。
よく見ると私だった。
この会には、もう二度と出たくない。
作品名:最後の「夜間院長」だった 作家名:ヤブ田玄白