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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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故郷へ帰った (二)

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 三〇分もたたないうちに相手は現れた。
長髪で黒のジャケットに黒の縞のネクタイ。
水商売風のオニイサンだ。
三〇代後半だろう。

 男は、外来のナース、Мさんに向かって大声で怒鳴った。
 「ヨウ、さっきは大した態度とってくれたナア。いろんな病院行ったけど、あんたみたいなヒデエ対応、はじめてだよ」
待合室には大勢の患者さんがいたので、私は男を別室に案内した。
こちらは、私と事務長のAさん、Мナースの三人。
(こういう場合は一対一の対応はまずい。複数で対応するのが原則だ)

 「断わっとくけど、おれは、インネンつけに来たんじゃネエよ。」男は言った。
「高いガソリン代使って来てんだからサア。こっちも暇じゃネエんだ。スイマセンですむもんじゃネエだろ。エッ、聞いてんのかヨ。先生」
とスゴむのはインネンつけてるとしか思えない。

 「ガソリン代、お支払いすればよろしいンでしょうか?」と聞きたくなった。
でも、今はリッター170円はする。
私の小遣いでは払えないかもしれない。思いとどまった。