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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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故郷へ帰った (二)

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「院長」になった



 「院長」になった。
院長は病院で一番偉い人だ。
私もこの年になって、ようやく院長になれたのだから、お祝いしてもらいたいと思った。
しかし、お祝いどころではなかった。

「院長」とはいっても、「夜間院長」つまり、夜間だけの責任者のことである。
正式には何というのだろうか?
「夜間管理責任医師」とでも言うのが正確かもしれない。

私の勤務する病院は、二四時間営業なので、夜も院長が必要だ。
昼間は本当の院長が病院にいるが、夜は帰宅する。
夜も家に帰らないと家族が心配するからだ。

 以前は、特定の科の医者が「夜間院長」をやっていたが、全員で負担を分かちあおうという気運が盛り上がった。
そのため、先月から、全科の幹部医師が日替わりで「夜間院長」を務めることになった。よけいな気運が盛り上がったものだ。

 私も大した実力はないが、年だけは取っているので、幹部医師である。
先日、「院長」の役目がまわってきた。
六十過ぎて、当直するとは思わなかった。
実際の診療は若いドクターがやるから、私が直接診察することはない。その点、患者さんの被害は少ない。