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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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故郷へ帰った (一)

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 先日、近くの家電量販店に行った。
「DVDレコーダー」にしようか、「DVDプレーヤー」にしようか迷った。
赤い半纏を着た、若い女の店員は、立て板に水の説明で、しきりに「DVDレコーダー」の有用性を説明したが、私には理解できなかった。
今までに、テレビ番組を録画したことなど、ほとんどないからだ。
二十年ぐらい前に、チャップリンの映画をVHSで録っただけだ。
二十年に一回使うなら「レコーダー」は要らないだろう。

 それでも、なんだかんだと「レコーダー」を勧めるので、私は、
「そんなら、私が録画したくなるようなテレビ番組、あんた作ってくれる?」と聞いてみたかった。(恐かったので言わなかったが)

 でも、ほんとうの理由は、値段だ。
「レコーダー」は五万円ぐらいなのに、「プレーヤー」は一万円以下である。
私は、正札に赤いマジックで6000いくらと書かれた「プレーヤー」を買おうと決めたが、店員に、
「もう少し、なんとかなりませんか?」ときいてみた。

 彼女は、私の心を読んでいたのだろう。
「お客さん、勘弁して下さいよ。これが精一杯のとこです」と、強い口調で言った。
私は彼女の気迫に押されて、言い値で買った。
いつも、あとひと押しが足らない。私の弱点だ。
この気の弱さで、何度チャンスを逃したことだろう。