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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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故郷へ帰った (一)

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診察室に犬がきた


 診察室にはじめて犬がきた。
私は医者である。獣医師ではない。
人間ならそうとう重症でもあわてないが、犬の病気は大学で教わらなかった。
どんな風に診察してよいか分からない。不安になった。

 ところが意外なことに、患者さんは、犬ではなく犬に連れられた人間だった。
目が不自由なため盲導犬を連れてきたのだ。
ラブラドールという種類だった。とても可愛いかった。
私は患者さんよりも犬の診察がしたい気持になった。

 犬は、患者さんの脇にきちんと正座はしないが、犬なりのお座りポーズをとっている。
クンともスンともいわない。もちろんワンなんていわない。
首から「仕事中」と書かれた木のフダをぶら下げている。
犬好きの人が気安く触ったりしないようにするためだ。
仕事が終わったら、どういうフダに替えるのだろう。「休憩中」あるいは「準備中」のフダにするのだろうか。