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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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故郷へ帰った (一)

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 「イヤー、驚いたヨ。
(Мさんに向かって)はじめてだナア、こういう人。受付においといていいの?
名前聞いても言わないし、喋ってもなんにも答えてくれない。
(Мさんは、こういう場合、トラブルをさけるため名前を名乗ってはいけないと教わっていたらしい)。
しまいに、そっちから電話切ったんだヨ。どんな教育してんだヨ!
大手の病院がこんなことでいいの?」

 (私のほうを向いて)
「あんたが代わったとき、名前聞いたら、すぐ言ってくれたよネ」と言った。
私は素直なタチなので、聞かれたらすぐに名乗る良い習慣が身に付いている。
そこが、彼の気に入られたらしい。やはり、名前を聞かれたら、名乗るべきだろう。

 私たちは、電話での対応が悪かったことを謝罪した。
男は、特に何も要求せず、言いたいことを言うと立ち去った。
帰り際、
「先生、名刺くれ」と言うので名刺を渡した。
事務長は、後日、私に迷惑がかかるのではないかと心配してくれたが、何事もなかった。
見かけほど悪い男でなかったらしい。