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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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故郷へ帰った (一)

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 診察台に横になった。
女医が私の口に手を入れた。
いつかの若手の歯科医、「干物氏」(高校野球補欠クン)の指の記憶が脳裏をかすめたが、女医さんは違う。
ハンドクリームの微かな芳香が漂って、私は一瞬恍惚となった。

 しかし、それも束の間、かわりに部長の大きな手が入ってきて、W先生が詰めてくれたセメントを剥がす作業にとりかかった。
力仕事なので、部長の得意分野だ。女医には任せられないらしい。
部長は力を込めて、電動ヤスリで削った。
「ゴリゴリガリガリ」から「ギリギリーーー。」となり、クライマックスへ向かった。
部長とクライマックスを迎えるのは、あまり嬉しくない。(女医のほうがうれしい)

 いざという時に備えて、左手を上げる準備をしたが、まもなく治療は終わった。部長が疲れたせいだろう。