故郷へ帰った (一)
看護協会の先生に叱られるかもしれないが、
「看護師ロボット」は、一部ナースの愛嬌不足を補うために、作られたものかもしれない。
そこが、「患者さんロボット」とはまったく違っている。
「患者さんロボット」は、医学生が、「今日はどうしましたか?」と聞くと、
表情を変えずに、どこが痛いとか苦しいとか答える。
教育用だから仕方ないとは思ったが、マネキン人形のような無表情では、学生の意欲もわかないだろう。
私が心配したとおり、ロボットに質問する学生の声は抑揚がなく沈みがちで、ロボットのようだった。
もし「看護師ロボット」が患者さんだったら、学生も張り合いがあったと思う。
しかし、調子に乗って無礼をはたらくと、学生をにらんだりするかもしれない。そこがまた、たいへん魅力的だったりする可能性もある。
「看護師ロボット」は、医療の第一線でも、雰囲気作りをとおして、モンスターペーシャントやクレーマー対策に役立つかもしれない。
我々の病院でも早めに導入してほしい。
特に私の「夜間院長」の日には、ぜひ必要だ。
診察室で用事のないときは、私の部屋でお茶でも飲んでいてもらいたいと思う。
作品名:故郷へ帰った (一) 作家名:ヤブ田玄白