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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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「検食」だけではすまなかった

INDEX|145ページ/158ページ|

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「先生にはお忙しいところ、私たちの応援をして下さるとのことで、ほんとうに感謝しています」
と前置きして、こちらの要望を伝えた。
なんだか低姿勢過ぎて、自分でも気持ち悪かったが、仕事を増やさないためだから仕方ない。

 しばらく間があって、H先生が口を開いた。
「お答えしてよろしいでしょうか?」
〈私が質問したのだから、次はH先生が答える番に決まっている。
それをわざわざ、私の許可を求めたところは、礼儀正しい人なのだろう〉
「ハイ、もちろんです。どうぞ」私は明るく答えた。

「では申し上げますが、私が院長に言われたのはですネ」
(私はすこし不安になって、H先生の顔色をうかがった)

「お辞めになったМ先生(高齢の非常勤の医師)の仕事をすべて引き継ぐということではございません」
「ハア?」
「私のところも忙しくて困ってるんですよ」
「エエ」
「それで、どなたか急にお休みになった時など、ちょっと手伝うという程度のことでした」
〈そうだったのか。その程度のことしか言えなかったのか。院長もだらしないナア〉
私はがっかりして声が出なかった。

 H先生は丁寧な口調で言った。
「私、これから外来がありますので、このぐらいでよろしいでしょうか?」
「・・・・・。わかりました」力なく私は答えた。