フルッフー
「よう、友達揚げ食うかい」
私はそう言って、唐揚げの欠片を鳩の近くに放った。
鳩は迷うことなく唐揚げをカクカクした動きで食べて「フルッフー」と鳴いた。
空は申し分ないくらい晴れ渡り、灼熱の夏からようやく秋に向けて空気も移りはじめたようだ。
公園の噴水からはキラキラとした水しぶきが舞い上がり、しっとりとした清涼感に包まれた私は満足していた。
弁当を食べ終わった私は、ゴミをまとめていつでも帰宅できる準備をした。
その間も鳩は私の顔を地面から見上げており、何か食べ物を恵んでくれないのかを期待していた。
「なんだまだ欲しいのか…」
一応、私は空になった弁当箱を確認してみる。
「お、小松菜のそぼろ煮の残骸発見」
私は弁当箱を逆さにして、鳩の前で降った。
「さあ食え、小松菜と友達ミンチ甘辛煮だよ」
地面に小松菜とそぼろが放たれる。
鳩は迷うことなく、小松菜を放置しながらミンチを食らう。
そして「フルッフー」と鳴いた。
その様子をしばらく眺めていたら、なんだか食後にも関わらず焼き鳥を食べたくなった。
焼き鳥とビール。
その強烈なワードが脳裏をめぐる。
「よし行くか」
私は公園をあとにして、焼き鳥屋に向かうことにした。
途中で弁当を買ったコンビニでゴミを捨て、小さい緑茶のペットボトルを買った。
歩きながら緑茶を飲み、焼き鳥屋を目指す。
宛のない休日は自由な感覚に溢れ、本来の自分を取り返したようだ。
焼き鳥屋【バードウォッチング】は、いつも混んでいる。
店員に1人で来た旨を伝えると、店内はすでに満席なので、外の立ち飲みスペースならすぐに案内できると言われた。
私はむしろ外で食べたいと思っていたので、すぐに了承し、生ビールと【本日の焼き鳥5種盛り】を頼んだ。
空は夕暮れ時をむかえ、茜色した空がなんだか寂しく見えた。
店内から路上に流れる煙。
路駐してあった自転車の影から、一羽の鳩が私に向かってトコトコ歩いてきた。
「まーたさっきのお前か、もうやらないからな」
私が鳩に向かって怒っていると、注文していた生ビールと焼き鳥が届いた。
「へい、お待たせいたしました」
「おお、ありがとうございます」
「ご注文の【生ビール】と【本日の焼き鳥5種盛り】です」
「【本日の焼き鳥5種盛り】はどんな内容ですか?」
「えーと、本日は全て【友達炭火丸焦げ】です」
店員はそう言うと素早く店の中にすっこんだ。
私は力無く「フルッフー」と鳴くと、そばに居た鳩は私を眺めながら「あはははは」と笑った。