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ベッドに寝転がっている男女。

 透、寝返りをうつように明の方へ体を向ける。

透「ねぇ? 明、死にたいって思ったことある?」

 明、表情変えず、透の方を向く。

明「いきなり、何?」
透「んっ? 聞いてみただけ」

 透、少しだけ笑顔を混ぜながら話す。

明「……あるよ」
透「そっ、か……」
 
 二人、しばし無言の時間が流れる。

明「透は、あるの?」
透「ある、よ」
明「そう、なんだ……」
透「でも、きっと私は死なない、かな」
 
 透、半身を少しだけ起こす。

明:「どうして、って聞いていい?」
 
 明、半身を少しだけ起こす。

透「……私は、私以外の人に生かされてるからかな?」
明「生かされてる?」
透「私は、きっと一人で生きているならとっくの昔に死んでいると思う……私は、私だけの命じゃないから今もこうして生きているんだと思う」
 
 透、どこか遠くを見つめる(視点の先に何かがいるイメージ)

明「透、一人の命じゃない?」
透「例えば……例えば、私以外が、私を誰も必要としなくなって、私の存在がこの世界から認識として消えてしまったとしたらきっと自ら命を絶つと思う」
 
 透、明の方へ顔だけ向ける。

明「……じゃあ、透はいつまでも死ねないと思う」
 
 明、透の方へ少し近づく。

透「どうして?」
明「だって、僕が透を必要とし続けるから」
透「それは、私のことが好き? ってこと」
明「わからないけど……多分、そうなんだと思う……透は?」
透「?」
 
 透、明を見て、小さく笑う。

明「透は、もし、僕が同じことを言ったら死なせてくれる?」
透「わからないけど……きっと」
明「……」
透「明と同じ答えを出すと思う」
 
 透、明の答えを聞いて、楽しそうに笑う。

明「それは、僕のことが、好きってこと?」
透「わからない。でも、きっとそう、なんだと思う」
 
 透、明の方へ近づく。

明「おかしいね」
透「うん、おかしい」
 
 二人、お互いに声を出さず、笑い合う。

明「ねぇ」
透「なーに?」
明「もし、僕が透以外の人を好きになったらどうする?」
透「どうだろ」
 
 透、明から視線を逸らさず小さく笑う。

明「嫌?」
透「嫌ではないかな」
明「そっか」

 明、納得した表情を浮かべる。

透「でも、もしかしたら死ぬ理由の一つにはなるかも知れないね」
明「……それは、脅し?」
透「かもね」
明「じゃあ、付き合う?」
 
 明、顔が触れそうな距離まで透に近づく。

透「いいよ」
明「じゃあ、今から恋人通し?」
透「そうなるね」
明「……やめた」
 
 明、透から離れ元の位置へ戻る。

透「どうして?」
明「透のこと好き、だとは思う……でもーー」
透「そういう関係は違う?」
 
 透、言い淀んでる明の言葉に割り込む。

明「怒ってる?」
透「怒ってる」
 
 透、明に表情を見せないようにそっぽを向く。

明「……嘘、だね」
透「どうして?」
明「だって……笑っているから」
透「バレたか」
 
 透、明の方へ向き、楽しそうに笑う。

明「……僕たちは、きっとそういうのじゃない」
透「私も明のこと好き。でも、そういうのじゃないかな」
明「まだ、そういう好きって気持ち以上のことは早いってこと、なのかな?」
 
 明、布団に倒れこむ。

透「好きだけでいいと思う。今は」
 
 透、ゆっくりとっ自分の布団へ入る。

明「好きってなんだろうね?」
透「わかんない。今の私たちにはわかんないよきっと」
明「そう、だね」
透「……アイス食べたい」
 
 透、勢いよく半身を起き上がらせる。

明「アイス?」
透「そう、棒アイス」
明「明日じゃダメ?」
 
 明、ゆっくりと半身を起こす。

透「今、食べたいかな」
明「そっか、買いに行く?」
透「行こっ」
 
 透、立ち上がる。

明「わかった。行こう」
 
 明、立ち上がる。
 二人、外に出る。(少し肌寒いイメージ)

透「ねぇ」
明「んっ?」
透「手、つなご」
 
 透、ゆっくりと明へ手を差し出す。

明「いいよ」
 
 明、差し出された手をしっかりと握る。

透「私ね」
明「んっ?」
透「明日、もし死んじゃってもいいかも」
明「僕も」
透「ねぇ」
明「んっ?」
透「……」
 
 透、明の口を自分の唇で塞ぐ。明、そのまま受け入れ、ゆっくりと透を抱きしめる。

明「ねぇ?」
透「何?」
明「思い出したんだけど、冷凍庫にある。アイス」
透「棒アイス?」
明「棒アイス」
透「じゃあ、帰ろっか」
明「そう、だね」
 
 二人、ゆっくりと来た道を戻り、家に戻っていく。
作品名:透明 作家名:小泉太良