金曜の夜、人間は二つに分かれる
名前を間違えてしょんぼりした私は、マックに行った(職員食堂はとっくに閉まっていた)
「ハンバーガー一個と、コークのS下さい」と注文した。
まもなく注文の品が出てきた。
ハンバーガーの他に、同じ大きさで、包み紙の色が違うハンバーガーのようなのがもう一つあった。
〈おかしいな、ハンバーガーは一つしか頼んでないのに。誰かのと間違えたんだろう〉
「これ、違うんだけど」と言うと、レジの女性はキョトンとしていた。
「ハンバーガーとコークを頼んだんだけど」
「エッ、コーク? コーラですか? ポークじゃなかったんですか」
と言われて、ハッとした。
レシートを見ると、『マックポーク』と書いてあった。
私の発音が正しく伝わっていなかったのだ。
彼女が難聴だった可能性もあるが、たぶん私の発声が異常だったのだろう。
私は、「申しわけなかったね」と言ってコークに変えてもらった。
〈あのマックポークはどうするのだろうか?
別のお客にまわすことはないだろうから、お店の人が食べるのだろうか? それとも、豚のエサになるのだろうか?〉
作品名:金曜の夜、人間は二つに分かれる 作家名:ヤブ田玄白