小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

「検食院長」なのか

INDEX|90ページ/142ページ|

次のページ前のページ
 

 この場面を見て、思い出した。
若いころ、脳卒中で意識のない患者さんの受け持ちだった。
ある夜、「急変です!」と呼ばれて、病室に行くと、呼吸が止まっていた。脈も弱くて触れない。
私は、付き添いの家族を集めて、
「ご臨終です。残念ですが、力及びませんでした。」と頭を下げた。
一同、深い悲しみに包まれた。

 とまもなく、患者さんは、「フーッ」と息を吹き返した。
「チェーン・ストークス呼吸」という、無呼吸と正常呼吸を繰り返す症状だったらしい。
私は穴があったら入りたかった。
その後、患者さんは一週間後にお亡くなりになった。

 あの時私は、恥ずかしさで一杯だったが、ほんとうは、息を吹き返したのだから、喜ばなければいけなかったのだろう。
今だったら、テレ隠しに、
「なーーんちゃって、ホラ、生き返ったでしょう。こういうことよくありますからね。気にしない、気にしない」なんて・・・・・。(やはり言えないだろう)
しかし、自分の体面ばかり気にしたことのほうが、医者としてよほど恥ずかしいことだと、今なら思う。

 『ディア・ドクター』は、医療とは何か?を問いかける真面目な映画だった。医者が鹿狩りで行方不明になる映画ではなかった。
最後は、予想外のハッピーエンドである。
この場面に、医療の原点が象徴されているのだろう(未見の方のために、詳細は内緒)。

 『ディア・ドクター』は心温まる映画だ。
まだご覧でない方にはお勧めです。
ちなみに平成二一年度、キネマ旬報邦画部門の第一位です。

作品名:「検食院長」なのか 作家名:ヤブ田玄白