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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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「検食院長」なのか

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 私はあわてて、
「ご面倒おかけして、まことに申しわけありません」と言った。
もしかすると、部長が、
「まったく世話が焼けるナア。今日になってそんな事言うなんて。
せっかく作った銀歯をどうしてくれるんだ!」
とスゴむのではないかと、恐れたためだ。

 ところが意外なことに、部長はこう言った。
「いや、こちらこそ。最初にきいておかなかったのがいけなかったのです」
部長は、一見ブッキラボーだが、根はいい人なのだ。
私はホッとして、〈型どり〉をやり直してもらうため、診察台に横になった。

 今日の担当は、前々回の〈高校野球補欠クン(干物氏)〉だった。
私は全神経を嗅覚に集中して警戒した。
が、幸運なことに今日はまったく干物の臭いがしなかった。今朝は干物を食べなかったのだろう。
技術的には、将来有望なKさんといい勝負だ。
高校野球なら補欠で終わりそうだが、歯医者としては何とかやってゆけると思う。
作品名:「検食院長」なのか 作家名:ヤブ田玄白