『 公衆電話から電話します。』
頭痛か歯痛か不明な痛みに顔をしかめ、その女は写真の羅列を眺める。駅に貼られたポスターに、見覚えのある顔が或る筈も無いが…どこで会ったのか、一人ずつ回想しているうちにホームに電車が走り込んできた。時計を見ると、3時間が過ぎていたが、乗り込んでぼんやりする。間に1本の電車も来ていなかったように思い、先ほどの男たちの顔が記憶から消し去られれば良いのに。
だが駅のホームに並ぶ日の丸は何だろうか。目の先に現れる、あの四角い切り貼りは? すべて後の日の少年の手にした改造銃の仕業だったのだろうか。
今日も飛行機は飛んでいる。あの空間に、いつかの時代から来ている鉄の塊は、人から人を介して、生きていい人と生きてはいけない人の区別も無しに、彼らの移動手段は最高手段だが、日の丸で外人を接待するつもりは無い。誰も知らない、偉い人たちの秘密を知ったが最後、あとは抜け殻で生きるか迷うばかりだ。
その女は犬死にしたが、実際には生きていることを一応、書いて於く。
作品名:『 公衆電話から電話します。』 作家名:みゅーずりん仮名