ひとりしずか シーン1「帰宅」
シーン1「帰宅」
靴を脱ぐ音を流しながら
「(一人暮らしをしてわかったこと・・・)」
フローリングを靴下で歩く音
「(帰宅してすぐ休めることの方が、少ない。)」
フローリングを靴下で歩く音、フェードイン
無音2秒
水で手を洗い、蛇口をひねる音。手についた飛沫を払い、タオルで拭く。
「(手洗いを済ませ、まず取り掛かることは、朝に洗った食器の片付け。)」
「はぁ・・・」(息メインで)
食器を片付ける音in
「(家の(中の)ことを全部自分でやらなきゃいけないのが、こんなに大変だなんて思ってなかった。)」
「(掃除もこまめにしないと髪の毛がたまるし、お惣菜が体に合わないから自分で料理をしなきゃいけないし。洗濯も洗い物も、誰かがやってくれるわけじゃないし…。)」
「(一人暮らしを始める前は、もっといろいろなことが出来ると思ってた。でもいざ始めてみると、
家事を終わらすことに追われていて、私のやりたいことは後回し。)」
「(同期にこのことを話したら、『ちょっとくらいサボればいいのに』、と言われた。
でももし、本当に手を抜いてしまったら・・・私はきっと、私のことが嫌いになると思う。)」
「(お母さんはいつもご飯を作ってくれた。
部活や塾で、どんなに帰りが遅くなっても、必ずご飯を用意してくれていた。
お父さんはいつも洗い物をやってくれた。
後で洗おうと思ってたお弁当箱も、他のことをしている間に片付けてくれていた。)]
[(いつか私に大切な家族ができた時のために、修行と思い込ませて家事をする。)」
食器棚の扉を閉める音
「よし。」
「(一人暮らしを始める前から決めていた。)」
作品名:ひとりしずか シーン1「帰宅」 作家名:平塚 毅