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夏とあいつとアイス

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今年も暑い。
今年は暑い。
どちらでもいい。とにかく暑い。
そして、 僕は彼を思い出す。

あいつ。

そんなふうに言えるくらい 彼のことを知っているわけではないけれど 知らないから彼をこう呼ぶんだ。

あいつ。

どうして夏になると あいつを思い出すのだろう。
道端に転がって涼(りょう)を感じていないだろうか。
公園の植え込みに日陰を求めているのではないか。
帰り道に公園の水飲み場で 噴水のように上げて水浴びしてないだろうか。

野良犬よりもたらたらと脚を運び、鳩のように首をねじっては世の中を見ている。そして 仔猫のようにふわっと懐に飛び込んでは、カラスのように凛としている。
まともな喩えにもなりゃしない。
( ̄∇ ̄;)ハッハッハ
僕は あいつのことをどんなヤツと思っているのだろう。
夏になると あいつは言葉をかけてくる。
そうなんだ。直接話すことはないんだ。可笑しな文章を送り付けてくるんだ。
僕を笑わせるとも 恐怖に怯えさせるとも なんの脈略もない文章なのだが それが僕には嵌るのだ。
その言葉も描く情景も記す名前も 僕には得体がしれないものばかりなのだが 胸の奥なのか 頭のどの神経にか ビクンと大きく弦を揺らすように刺激が伝わる・・・ような気がする。

冬。そう冬には あいつはいない。
その理由は知っている。あいつは極度の寒がりで、喉を痛めて風邪をひく。
「元気か」と訊ねたらならば「ダメだ」とでも返って来るならそれもいい。
ぼやけた春に「冬眠してた、病院で」とか「街から離れていた」とかくるなら上等。
また夏にその答えにならない文章が来て あいつの心情を知ることとなる。

良かったぁ。一年過ごせたんだね。本当にそう思う。
宇宙の彼方へ行っているのか、地中に潜っているのか、はたまた大海の真ん中に漂っているのかと考えるほうが楽なのだ。
「やっと立てたよ」「食が通るようになった」「人と会うことができたよ」
そんな様子が薄く見えてくると心配で仕方がない。

誤解の無いように あいつは鬱ではない。けっしてそうではない。
自分で言うのもなんなのだが、僕の話が可笑しく外れているように感じるなら それは正解だ。あいつを語る時は 僕の思考はたぶんあいつ寄りになっている。そうならないと言い表せないのだ。

あぁ。もうこれくらいでいいか。
今年の夏は暑いから、アイスを抱きしめよう。
あいつの言葉が届くように ひんやりアイスを頬張ろう。

アイスってなんだ?
氷か? アイスクリームか? 氷菓なのか?
じっくり考えよう。お気に入りの あ・椅子で・・・
 


もうやめて・・・おこう。

置こうではなく 座るのか・・・

まあ そんなもんだ。


  
     ―了―
作品名:夏とあいつとアイス 作家名:甜茶