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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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女の歯医者さんだった

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 こういう悪い風潮の影響だろう。
日頃紳士的な私も、何か言いたくなる事はある。

 先日のお昼、職員食堂で注文した冷やし中華が出てこなかった。
いつもはすぐ出てくるのだ。
すると、ポリの容器に入った「お持ち帰り用」の冷やし中華が出た。
勘違いしたらしい。

 私が黙っていると、奥から白い帽子のおじさんが出てきて、
「お客さんは何をお待ちですか?」と言う。
その口調がいつもと違って優しくなかった。
〈今朝、出がけに奥さんとケンカでもしてきたのだろうか。〉

 「冷やし中華です」と答えると、
「お持ち帰りじゃないんですか」と厳しい目を私に向けた。
〈奥さんとケンカしたのではなく、もしかすると財布を落としたのかも知れない〉。
私はオズオズと
「ハイ、ここで食べるんです」と答えた。
おじさんは、何も言わず奥に引っ込んだ。

 しばらくたってから、私の冷やし中華が出てきたが、その間に後の人が何人か、注文の品を持っていった。
温厚な私は決して怒りはしなかったが、ちょっとムカついた。
たかが冷やし中華一つでも人は傷つくものである。
あの時、白帽子のおじさんが、一言、
「スイマセン」と言えば、私は笑って許しただろう。

 私が医者として、何十年も患者さんとトラブルなしに過ごせたのは、何かあったら、とりあえず、「スイマセン」と謝っておく良い習慣が身についているせいだ。