女の歯医者さんだった
個人情報の中で人に知られたくないものとはどんな事なのだろう。
私の場合すぐに思いつくのは、昼飯のメニューだ。
これは人に知られたくない。
毎日、寿司やステーキであれば公表されても支障ないが、ほとんどが、タンメンか山菜うどんでは、個人情報が漏れた際、バカにされる可能性がある。
その他の事はさほど問題ない。
私の生年月日が公表されれば、知らない人から誕生日のプレゼントがもらえるかもしれない。
私の血液検査データが公表されると、さすが医者だけあって自己管理が徹底していると賞賛を浴びる事になるだろう。
趣味の野球やゴルフにしても、私の情報が漏れて困る事はない。
私のひいきチームが知られていれば、東京ドームのチケットも、間違って反対側の席を取ってくれる人はなくなるだろう。
ゴルフの腕前も、シングルプレーヤーでないことが公表されれば、安心して誘ってくれる人が増えるはずだ。
嗜好品などは、情報が漏れたほうが都合がよいこともある。
好きなワインやビールの銘柄も公表しておいたほうが、「何を贈ったらよいだろう?」という患者さんの悩みは軽減されるだろう。
人に知られると困る個人情報をたくさん持っている人がいる一方、私のように、世に知られない善行を積み重ねて、多くの患者さんから感謝されている医者もいる。
これらの情報が世間に漏洩されることを願っているのだが、よい事というものは広まりにくいものだ。
患者さんは皆、遠慮なく、私の個人情報を世間に発信してもらいたい。
作品名:女の歯医者さんだった 作家名:ヤブ田玄白