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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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看護師ロボット

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 私はホッとして、以前から部長に確かめておきたかったことを思い出した。
それは初回治療の時の〈シンマ〉という符丁の意味である。

 「最初の治療のとき、麻酔をする時に、〈シンマ〉と言いましたよネ。あの〈シンマ〉というのは、何の略ですか? 心臓マッサージのことじゃないですよネ」と言うと、
「ハイ。浸潤麻酔のことです。つまり、注射すると、その付近だけ薬がしみて麻酔がかかるわけです」と答えてくれた。

 「心臓マッサージじゃないですよネ」とバカなことを言ったせいだろう。助手も微笑んでいた。
その時、初めて助手の顔を正面から拝見したのだが、想像していたより品のいい秀才そうな顔だった。今後は技術のほうも磨いてもらいたい。

 次回、本歯を入れるときは、部長がやってくれるのだろう。
今日は誰でも出来る治療だったので、将来有望な若手に任せたものと思う。
「あと何回ですか?」と部長に訊ねると、
「三回です」と答えた。

 自動精算機で精算した。
〈助手がやったのだから、いつもより安いはずだ〉と思ったが、素人考えだった。
治療費は、いつもの1300円より高くて3240円だった。
〈部長より助手のほうが三倍も高いのはなぜだろう?〉と疑問に思ったが、治療内容の差だった。

 日本の健康保険の医療費は、誰がやったかには関係ない。
何をやったかによって決まるのである。

作品名:看護師ロボット 作家名:ヤブ田玄白