昔はテレビが面白かったような気がする
最近、同僚の猫好きの男(S)に話した。
「うちの猫さ、○○チャンていうんだけどネ。毎朝、オレの顔、一〇回ぐらい舐めてくれるんだ。」
「ヘエ、なにそれ。お前の顔、何かいいにおいでもするんじゃないの?」
「そうかもしれないけど。オレの顔舐めてくれるのは、この世で○○チャンだけだからな。」
「そんなに舐めてほしいのか。」
「そうでもないけど。うれしいもんだよ。」
などと六十過ぎた男の会話とは思えない。
私と猫の間に身体的関係はないが、精神的な絆は強いものがある。
私は愛する猫を、ケータイの待ちうけ画面に入れていた。
ある時、私の科のナースに見せた。
「うちの猫なんだけど。」
「ア、先生の可愛がってる猫ってこれですか?」
「そうだヨ。」
「エッ、でも。これって、フツーの猫じゃないですか。」
私以外の人間に、○○チャンの可愛さを理解してもらうのは難しいと思った。
それ以来私は、ケータイの待ち受け画面に、猫の写真を使わないことにしている。
作品名:昔はテレビが面白かったような気がする 作家名:ヤブ田玄白