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　先日、知人に誘われて、都内の寿し屋に行った。
「日本一の寿し職人」の店ではなかったが、知る人ぞ知る、けっこう有名なすし屋らしい。
ネタや、寿しそのものの味は、どうだろう、私が時々行く場末のすし屋とさして違わないと思ったが、驚いたことが一つあった。

　それは、大将が、握った寿しを手渡しで、カウンター越しの客に出すのである。
私には初めての経験だった。
大将は手渡ししたあと、私が食べるのをじっと見ている。
これは少し行き過ぎかナと思った。愛も過剰になると、うっとうしい。

　あるいは、愛ではなく、自分が握った寿しで、客に異変が起こるかどうか、確認する義務があるのかもしれない。
喉を詰まらせたり、具合が悪くなったりしないか、である。
私は、何の異変も起こらず、おいしくいただいた。

　しかし、食べる側としては、じっと見られていると、何か感想を求められているようで落ち着かないものだ。
なかなか本心は言えない。当たり障りなく、
「おいしいネ」などと言ってしまった。
食べ物は、勝手にゆっくり食べたいものである。