大学医局の同窓会に出た
翌日の9時半ごろ電話があった。
「歯科のKと申しますが、十時ごろいかがでしょうか?」
丁寧な言葉遣いだった。
診察室に行くと、Kさんが待っていた。
Kさんとは、クビになったのではないかと私を心配させた、将来有望な若手だった。
彼が無事で安心した。
Kさんは、
「今日は、型(かた)どりします」と言って、私の口に手を入れた。
干物の臭いがしなかった。
前回の臭いは、「高校野球補欠クン」特有の現象だったのだ。
歯科医全体の問題でないことがわかって安心した。
Kさんは、
「少し響きますヨ」と断ってから、トンカチのような器具で仮歯を外した。
今日は痛くない。かなり進歩の跡がみられる。
部長が期待するだけの事はある。
「少し熱いものが入りますが、我慢してください」と言って、熱いものを歯につけた。
今日は唇につけなかった。目玉も大丈夫だった。
作品名:大学医局の同窓会に出た 作家名:ヤブ田玄白