更新日時:2022-07-10 16:22:05
投稿日時:2022-05-22 11:03:54
ウラバンナ(白秋紀)
作者: 田中よしみ
カテゴリー :現代小説
総ページ数:6ページ [完結]
公開設定:公開
読者数:0/day 12/month 655/total
ブックマーク数: -
いい作品!評価数:0 users
著者の作品紹介
秋津柊の娘はやはり私の血を分けた娘であった。
池澤捷一が秋津柊の手紙を手元に留めていたことも、秋津柊が妊娠を知らせなかったのも同じ理由からであった。田舎の因習である部落差別という昔からの悪しき因習が柊の心の奥底を傷つけ臆病にしていた。旧家の池澤捷一はその差別の実態を知っていたので、柊の手紙を私に渡すこと躊躇っていた。
柊は私を部落差別の渦中に巻き込まないために妊娠の報告をしなかったのである。
池澤捷一は悪しき因習から柊と冬を護るだけでなく、旧家の次男を秋津家に養子に出すことで冬との縁組を遺言にしていた。
その上で、昔ながらの部落差別を打破しようとしていたのであり、それを私に伝えるために盆の帰省を目論んでいた。私は高校時代からそれを知った上で柊を好きになっていたので池澤捷一が言ってくれればここまで遠回りをすることもなかった。
私にとって出自なんて何のことはないのであり、秋津柊の何もかもを含めて好きだということを37年前に分かりやすく伝えなかったことを後悔していた。
日本という国は伝統や因習を平気で切り捨てているのに、人種差別だけは卑劣な人間がひそひそと語り継いでいる。人権後進国から早く脱却して欲しいが、そういう卑劣な人間こそ、O元大統領の言葉を噛みしめて欲しい。
『人は生まれた時から肌の色や育ち、宗教で他人を憎む人などいない、人は憎むことを学ぶのだ』
池澤捷一が秋津柊の手紙を手元に留めていたことも、秋津柊が妊娠を知らせなかったのも同じ理由からであった。田舎の因習である部落差別という昔からの悪しき因習が柊の心の奥底を傷つけ臆病にしていた。旧家の池澤捷一はその差別の実態を知っていたので、柊の手紙を私に渡すこと躊躇っていた。
柊は私を部落差別の渦中に巻き込まないために妊娠の報告をしなかったのである。
池澤捷一は悪しき因習から柊と冬を護るだけでなく、旧家の次男を秋津家に養子に出すことで冬との縁組を遺言にしていた。
その上で、昔ながらの部落差別を打破しようとしていたのであり、それを私に伝えるために盆の帰省を目論んでいた。私は高校時代からそれを知った上で柊を好きになっていたので池澤捷一が言ってくれればここまで遠回りをすることもなかった。
私にとって出自なんて何のことはないのであり、秋津柊の何もかもを含めて好きだということを37年前に分かりやすく伝えなかったことを後悔していた。
日本という国は伝統や因習を平気で切り捨てているのに、人種差別だけは卑劣な人間がひそひそと語り継いでいる。人権後進国から早く脱却して欲しいが、そういう卑劣な人間こそ、O元大統領の言葉を噛みしめて欲しい。
『人は生まれた時から肌の色や育ち、宗教で他人を憎む人などいない、人は憎むことを学ぶのだ』