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昭和３９年の東京オリンピックの陰で地方の炭鉱は閉山して炭鉱夫一家は都会へ旅立って行った。矢納孝夫は３年の海外勤務を経て東京本社に復帰して３２歳の時に銀行員と見合い結婚した。妻が新興宗教に入信したために７年の別居生活を経て４０歳で離婚した。
1997年には故郷の炭鉱鉄道も廃止されていたが、矢納孝夫は五十路になってＮエンジニアリングを退職して子会社の社長に就任していた。
2000年の世紀末に、幼馴染みの池澤捷一が謎の電話を遺して病死した。カンテラの女将が秋津柊のその後の噂話を聞かしてくれたが、北九州の姉の家に身を寄せた後に現在は実家に娘と住んでいるという。
池澤捷一の初盆で20年ぶりに帰省することにしたが、その時に秋津柊にも逢って今度こそ秋津柊への思いを清算するつもりだった。