T君の教授昇進パーティに招かれた
若い頃は純粋だったので、
「学会とは、優れた研究を発表したり討論する場であるのに、なぜ、夜また集まってくだらないことを話さなければならないのか。」
と、パーティをバカにしていた。
しかし、今になって思うと、それが大変な間違いだったことに気づく。
学会に参加する目的の大半はこのパーティにあることを知らなかった。
若い頃に比べると、私もだいぶ大人になったのだろう。
最近は、昼間の勉強は聞いていても分からないことが多くなったせいか、つい居眠りしてしまう。
睡眠の合間に勉強しているといってもいい。
昼間十分寝ているので、夜は元気になる。
パーティでは、「サッポロクラシック」をはじめとして、各種のアルコール、北の幸をふんだんにご馳走になった。
参加費の割に高級でおいしいものを腹一杯食べられる。
寿司やステーキはもちろん、北海道のカニ、イクラウニ丼、ラーメン、そばなど美味しいものばかりだ。
糖尿病学会や動脈硬化学会などという学会がある。
そういう学会のパーティでは、低カロリーの糖尿病食や、低脂肪の食事が出されてもよいと思われるが、そのような事はない。
高カロリーの美食を食べさせて、糖尿病や動脈硬化を悪化させる事を目的にしているらしい。
食事前と食事後で血液をとってどの程度の変化があるのか、研究している様子も見られない。
以前、地方の学会で、余興で「椀子そば」の早食いやワインの利き酒コンクールが行われたこともある。
昼間以上に真剣さが漂っていたのが印象的だった。
作品名:T君の教授昇進パーティに招かれた 作家名:ヤブ田玄白